
不動産売却の「囲い込み」とは?売却期間の長期化や価格低下を防ぐための基礎知識
不動産売却の「囲い込み」とは?売却期間の長期化や価格低下を防ぐための基礎知識
この記事の概要
不動産の売却を依頼した際、本来であれば幅広く購入希望者を募ることで、より良い条件での成約を目指します。
しかし、不動産会社が物件情報を他社へ十分に共有せず、自社だけで買主を探そうとする「囲い込み」が行われると、売主にとって不利益が生じる可能性があります。
- 売却期間が長期化する
- 購入希望者との接点が減る
- 売却価格が下がる可能性がある
この記事では、不動産売却における囲い込みの仕組み、なぜ起こるのか、実際にどのようなケースがあるのかをわかりやすく解説します。
囲い込みとは
不動産の囲い込みを理解するには、まず一般的な不動産売却の流れを知っておく必要があります。
売主が不動産会社へ売却を依頼すると、不動産会社は広告や既存顧客への紹介などを通じて購入希望者を探します。
専任媒介契約や専属専任媒介契約など一定の媒介契約では、不動産会社が指定流通機構の不動産情報ネットワークへ物件情報を登録し、他の不動産会社にも情報を共有する仕組みがあります。
これにより、売却を依頼された会社だけではなく、他の不動産会社が抱えている購入希望者にも物件を紹介できるようになります。
通常の不動産流通
通常は、売主から売却を依頼された不動産会社が物件情報を広く共有し、複数の不動産会社が購入希望者を探せる状態にします。
その結果、より多くの購入希望者へ情報が届きやすくなり、売主にとって条件の良い買主が見つかる可能性も高まります。
囲い込みが行われるとどうなる?
囲い込みとは、売却を依頼された不動産会社が物件情報を他社へ十分に共有せず、自社の顧客だけで売買を成立させようとする行為を指します。
本来なら他社の購入希望者にも紹介できる物件が、自社の販売活動だけに限定されてしまうため、購入機会が減ってしまいます。
囲い込みによって起こり得る問題
- 購入希望者の母数が減る
- 成約までの期間が長くなる
- 売主が値下げを迫られる可能性がある
- より良い条件の購入希望者を逃す可能性がある
なぜ囲い込みが起こるのか
囲い込みが起こる背景の一つとして、不動産売買における仲介手数料の仕組みがあります。
売主から売却を任された不動産会社が、自社で購入希望者まで見つけて成約すると、売主側と買主側の双方の仲介を担当するケースがあります。
このような取引では、不動産会社が売主・買主の双方から仲介手数料を受け取る形になることがあります。
他社が買主を見つけた場合
一方、売却を担当している会社とは別の不動産会社が買主を見つけた場合、売主側と買主側でそれぞれ別の不動産会社が仲介します。
その場合、売主側の不動産会社は売主から、買主側の不動産会社は買主から、それぞれ仲介手数料を受け取る形が一般的です。
このため、自社で買主まで見つけた方が不動産会社にとって収益が大きくなる場合があり、そのことが囲い込みにつながる要因の一つとされています。
売主にとって重要なのは「誰が買うか」より「良い条件で売れるか」
売主にとって重要なのは、不動産会社がどのような形で仲介手数料を得るかではありません。
できるだけ多くの購入希望者へ物件情報を届け、その中から価格・時期・条件などを含めて最も納得できる買主を見つけることが重要です。
囲い込みによって失われる売却機会
売却を担当する会社が自社の顧客だけに物件を紹介すると、他社が抱えている購入希望者へ情報が届きにくくなります。
仲介手数料の支払い方が売主にとって大きく変わらない場合でも、購入希望者の数が減ることで、成約機会そのものを失う可能性があります。
特に人気のある地域や需要の高い物件では、複数の購入希望者へ情報を届けることが、より良い条件での売却につながる場合があります。
売却を依頼する際には、査定価格だけでなく、「どのように購入希望者を集めるのか」「他社からの問い合わせにも適切に対応するのか」といった販売方針も確認しておくことが重要です。
囲い込みにはどのようなケースがある?
囲い込みは、売主から見えにくい形で行われる場合があります。
ここでは、囲い込みにつながり得る代表的なケースを紹介します。
1.物件情報を適切に共有しない
専任媒介契約や専属専任媒介契約では、一定の条件のもとで指定流通機構への登録が必要になります。
本来、登録された物件情報は他の不動産会社も確認でき、購入希望者へ紹介できる状態になります。
しかし、必要な情報共有を行わず、自社だけで買主を探そうとすると、他社からの紹介機会が失われてしまいます。
2.登録後すぐに情報を見えにくくする
形式上は物件情報を登録していても、登録後に他社から確認しづらい状態にしたり、実質的に紹介できない状態にしたりすれば、広く購入希望者を募るという本来の目的が果たされません。
売主としては、物件情報が適切に公開され、他の不動産会社からも問い合わせを受け付けているか確認することが重要です。
3.「すでに話が入っている」などと伝えて紹介を断る
囲い込みで注意したいのが、他の不動産会社から物件確認の問い合わせがあった際に、「すでに申し込みが入っている」「商談中である」などと説明し、実際には紹介できる状態であるにもかかわらず他社からの案内を断るケースです。
表面上は販売活動を続けているように見えても、実際には自社以外からの購入希望者を受け付けていない状態になってしまいます。
また、「住宅ローンの審査中なので少し待ってほしい」などと説明し、他社からの紹介を先延ばしにするケースも考えられます。
4.販売資料を理由に紹介を遅らせる
「現在、販売資料を作成中です」などを理由に、他社への物件紹介を遅らせるケースもあります。
特に購入希望者が多い地域では、数日間の遅れでも売却機会に影響する可能性があります。
販売準備に必要な時間はあるものの、不自然に情報公開を遅らせていないかを確認することが大切です。
5.他社が案内しにくい状態をつくる
情報を公開していても、他社が購入希望者を案内しにくい状況を意図的につくってしまえば、実質的な囲い込みにつながることがあります。
たとえば、空き家の鍵を遠方の店舗だけで管理し、他社から内覧希望が入ってもすぐに案内できない状態にするケースなどです。
購入希望者が「今日見たい」と考えていても、案内まで長期間かかれば、その間に別の物件を購入してしまう可能性があります。
囲い込みを防ぐために売主が確認したいこと
囲い込みは売主から把握しにくい場合がありますが、売却を任せる会社とのやり取りの中で確認できるポイントもあります。
売却活動中に確認したいポイント
- 物件情報がどのように公開されているか
- どの広告媒体へ掲載しているか
- 他の不動産会社から問い合わせが入っているか
- 内覧件数や問い合わせ件数はどの程度あるか
- 販売活動の状況を定期的に報告してくれるか
- 反響が少ない場合、その理由を具体的に説明できるか
問い合わせや内覧が極端に少ない場合、必ずしも囲い込みが原因とは限りません。 価格や物件条件、地域の需要などが原因であることもあります。
ただし、売却活動について質問しても具体的な説明がない場合や、他社からの問い合わせ状況を明確に教えてもらえない場合は、販売状況を詳しく確認した方がよいでしょう。
売却を任せる不動産会社の選び方
囲い込みを避けるためには、媒介契約を結ぶ前の不動産会社選びも重要です。
査定額の高さだけで判断するのではなく、その会社がどのような販売活動を行うのかを確認しましょう。
販売方法を具体的に聞く
査定時には、次のような内容を確認すると販売方針を比較しやすくなります。
- どのような購入者を想定して販売するのか
- インターネット広告をどのように活用するのか
- 他の不動産会社とどのように情報を共有するのか
- 問い合わせや内覧への対応方法
- 販売状況をどの頻度で報告するのか
高い査定額だけで選ばない
売却を任せてもらうために、相場より高い査定価格を提示する会社もあります。
しかし、売り出した後に購入希望者が現れなければ、最終的には価格を下げることになる可能性があります。
査定価格だけでなく、「なぜその価格で売れるのか」「どのような販売戦略で購入希望者を集めるのか」まで確認しましょう。
囲い込みが疑われる場合は販売状況を確認する
売却活動を始めてから問い合わせや内覧がほとんどない場合は、不動産会社へ販売状況を確認しましょう。
まずは、広告掲載状況や問い合わせ件数、他社からの紹介状況などについて具体的な説明を求めます。
そのうえで、販売活動に納得できない場合は、媒介契約の内容や契約期間などを確認し、今後の対応を検討することになります。
重要なのは、「売れないからすぐ値下げする」と判断する前に、物件情報が十分に市場へ届いているかを確認することです。
値下げの前に販売活動を確認する
売却期間が長引くと、値下げを提案されることがあります。
価格が原因で売れない場合もありますが、十分な広告活動や他社への情報共有が行われていなければ、価格を下げても根本的な問題は解決しません。
価格変更をする前に、これまでどのような販売活動が行われ、どの程度の購入希望者へ情報が届いたのか確認することが大切です。
まとめ
不動産売却における「囲い込み」とは、売却を任された不動産会社が物件情報を広く共有せず、自社だけで買主を見つけようとすることで、売主の売却機会が狭くなる状態を指します。
囲い込みによって購入希望者との接点が減ると、売却期間が長期化したり、値下げが必要になったりする可能性があります。
売主にとって重要なのは、できるだけ多くの購入希望者へ物件情報を届け、その中から条件の良い買主を見つけることです。
不動産会社を選ぶ際には、査定価格だけでなく、広告方法、情報共有の方針、問い合わせへの対応、販売状況の報告なども確認しましょう。
売却を開始した後も、問い合わせ件数や内覧状況などを定期的に確認し、納得できる販売活動が行われているか把握しておくことが大切です。
