
実家を更地にするのは待って!空き家の税金と売却制度を解説
実家を更地にするのは待って!空き家の税金と売却制度を解説
この記事の概要
相続した実家や長期間使っていない空き家を、管理が大変だからという理由ですぐに解体しようと考える方も少なくありません。
しかし、住宅が建っている土地を更地にすると、固定資産税の軽減措置が受けられなくなり、税負担が大きく増える可能性があります。
一方で、空き家を放置すると建物の老朽化や害虫被害、近隣トラブル、維持費の増加など、さまざまな問題が生じます。
この記事では、空き家を放置するリスク、更地にする前に確認したい税金の仕組み、空き家を売却しやすくする制度について解説します。
空き家を放置すると起こる問題
空き家は、人が住まなくなると急速に傷み始めます。 室内の換気や通水、清掃が行われなくなることで、湿気やカビ、害虫などが発生しやすくなるためです。
特に温暖で湿気の多い地域では、庭木や雑草も短期間で成長します。 管理をしないまま放置すると、敷地内だけでなく隣地や道路へ枝が伸び、近隣へ迷惑をかけることがあります。
建物の劣化が急速に進む
人が住んでいる住宅では、窓の開閉や換気、日常的な清掃によって建物の状態が保たれています。
空き家になると室内に湿気がこもり、壁や床、天井にカビが発生しやすくなります。 雨漏りや配管の劣化に気付くのも遅くなり、被害が広がる可能性があります。
また、木造住宅ではシロアリ被害にも注意が必要です。 長期間放置された建物は、構造部分まで傷み、修繕費や解体費が高額になることがあります。
庭木や雑草が近隣トラブルにつながる
庭の手入れをしないまま放置すると、雑草や樹木が伸び続けます。 隣地へ枝葉が越境したり、落ち葉が周辺へ飛散したりすることで、近隣住民から苦情が寄せられることがあります。
雑草が生い茂ると、蚊やハチ、ネズミなどの害虫・害獣が発生する原因にもなります。 外から見て管理されていないことが分かると、不法投棄や不法侵入のリスクも高まります。
定期的な空き家管理が必要になる
空き家を維持するには、定期的な換気、通水、清掃、草刈り、郵便物の確認などが必要です。
実家が遠方にある場合は、移動時間や交通費も負担になります。 自分で管理できないときは空き家管理サービスを利用できますが、継続的な費用が発生します。
将来住む予定や活用する計画がない場合は、管理費を払い続ける前に売却を検討することも重要です。
実家が「資産」ではなく「負動産」になる可能性
親が大切にしてきた実家であれば、高い価値があると考える方もいるでしょう。 しかし、不動産の売却価格は建物の立派さだけで決まるものではありません。
立地、土地の形状、道路との接し方、周辺環境、建物の築年数や状態など、さまざまな条件によって評価されます。
需要の少ない地域や交通の不便な場所では、建物の解体費用が土地の売却価格を上回ることもあります。 その結果、所有しているだけで税金や管理費がかかる「負動産」になる可能性があります。
建物の価値は年数とともに低下する
住宅は、築年数が古くなるほど建物としての評価が下がる傾向があります。 適切なメンテナンスが行われていない空き家では、劣化の進行によってさらに価値が下がります。
売却を先延ばしにした結果、建物を利用できる状態ではなくなり、解体を前提とした売却しかできなくなるケースもあります。
中古住宅として売却できる可能性が残っているうちに査定を受け、現在の価値を把握することが大切です。
思い入れと市場価値は分けて考える
実家には家族の思い出があり、簡単に手放せないと感じることもあります。
しかし、所有を続ける場合は、固定資産税、保険料、修繕費、管理費などを継続して負担しなければなりません。
今後住む人がいないのであれば、感情面だけでなく、経済的な負担や将来の管理まで含めて判断する必要があります。
空き家を所有し続けるためにかかる費用
誰も住んでいない家でも、所有しているだけでさまざまな費用がかかります。
- 固定資産税や都市計画税
- 火災保険料
- 電気・水道などの基本料金
- 庭木の剪定や草刈り費用
- 建物の修繕費
- 空き家管理サービスの利用料
- 現地を訪れるための交通費
一つひとつの金額は小さく見えても、数年間所有し続けると大きな負担になります。
倒壊や事故が起きれば所有者の責任が問われる
老朽化した屋根や外壁が落下し、通行人や隣家へ損害を与えた場合、所有者が責任を問われる可能性があります。
台風や地震などの自然災害をきっかけに、管理されていない建物が倒壊する危険もあります。
空き家だからといって責任がなくなるわけではありません。 所有者には、建物と敷地を適切に管理する必要があります。
相続が重なると処分が難しくなる
空き家の名義を変更しないまま次の相続が発生すると、相続人の人数が増え、権利関係が複雑になることがあります。
売却する際に多くの相続人から同意を得なければならず、連絡が取れない人がいると手続きを進められない可能性もあります。
将来の負担を次の世代へ残さないためにも、利用予定のない実家は早めに方針を決めることが重要です。
管理状態の悪い空き家は固定資産税が増えることも
住宅が建っている土地には、固定資産税を軽減する住宅用地特例があります。
しかし、適切に管理されていない空き家が「特定空家等」や「管理不全空家等」に該当し、自治体からの勧告を受けると、住宅用地特例の対象外になる可能性があります。
住宅用地特例を受けられなくなると、土地にかかる固定資産税の負担が大幅に増えることがあります。
特定空家等に該当する可能性がある状態
- 倒壊など保安上の危険がある
- 衛生上有害となるおそれがある
- 景観を著しく損なっている
- 周辺の生活環境を守るため放置が不適切である
建物の状態が悪化してから対応すると、修繕や解体に高額な費用が必要になります。
自治体から指導や勧告を受ける前に、修繕、管理、売却、解体などの対応を検討しましょう。
実家を更地にする前に確認したい固定資産税の仕組み
老朽化した実家を見ると、「建物を解体して更地にした方が管理しやすい」「更地の方が売却しやすい」と考える方も少なくありません。
しかし、住宅が建っている土地を更地にすると、固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなり、土地の税負担が大きく増える可能性があります。
住宅用地特例とは
住宅が建っている土地には、固定資産税の負担を軽減する住宅用地特例があります。
一般的には、住宅1戸につき200平方メートルまでの小規模住宅用地について、固定資産税の課税標準が6分の1に軽減されます。 200平方メートルを超える部分についても、一定の範囲で3分の1に軽減されます。
建物を解体して住宅用地ではなくなると、この特例を受けられなくなります。 そのため、固定資産税が単純に必ず6倍になるわけではありませんが、土地の条件によっては税負担が大幅に増える可能性があります。
固定資産税は毎年1月1日の状態で決まる
固定資産税は、原則として毎年1月1日時点の土地や建物の状態を基準に課税されます。
年内に建物を解体し、翌年1月1日時点で更地になっている場合は、翌年度から住宅用地特例を受けられない可能性があります。
解体時期によって税負担が変わることがあるため、工事を依頼する前に、不動産会社や自治体の担当窓口へ確認することが大切です。
更地にすれば必ず売りやすくなるとは限らない
土地を探している購入希望者にとっては、更地の方が建物の解体費用を負担せずに済み、すぐに建築計画を立てられるというメリットがあります。
一方で、中古住宅として利用したい方や、リフォームを前提に購入したい方にとっては、建物が残っていることが魅力になる場合もあります。
建物を解体してしまうと、中古住宅として販売する選択肢は失われます。 売却方法を決める前に、古家付き土地、中古住宅、更地のどの状態が最も需要を見込めるのかを確認しましょう。
建物の解体には高額な費用がかかる
建物を解体する場合は、固定資産税だけでなく、解体工事そのものの費用も考慮する必要があります。
解体費用は、建物の構造、床面積、周辺道路の広さ、重機の搬入条件、残置物の量などによって異なります。
- 木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造などの建物構造
- 建物の延べ床面積
- 前面道路の幅や重機の搬入可否
- アスベストなどの有害物質の有無
- 家具や家電など残置物の量
- 庭木、塀、物置など付帯設備の撤去範囲
建物本体の解体だけでなく、家財の処分、庭木の伐採、ブロック塀の撤去などで追加費用が発生することもあります。
複数の解体業者から見積もりを取る
解体費用は業者によって差が出るため、複数社から見積もりを取って比較することが重要です。
金額だけでなく、工事範囲、追加費用の条件、近隣への配慮、廃棄物の処理方法なども確認しましょう。
極端に安い見積もりの場合、後から追加費用を請求されたり、適切な廃棄物処理が行われなかったりするリスクもあります。
解体費用を回収できるとは限らない
建物を解体して更地にすると売却価格が上がる場合もありますが、必ずしも解体費用以上に価格が上昇するとは限りません。
たとえば、解体に数百万円かかったとしても、土地の売却価格が同じ金額だけ上がるとは限らないため、結果的に手元に残る金額が減ることもあります。
解体前と解体後の想定売却価格、工事費用、税負担を比較したうえで判断しましょう。
古家付き土地として売却する方法もある
建物が古くても、必ずしも売主が解体してから売却する必要はありません。
建物を残したまま「古家付き土地」として販売し、購入後に買主が利用方法を決める方法があります。
古家付き土地として売るメリット
- 売主が解体費用を先に負担せずに済む
- 売却まで住宅用地特例を維持できる可能性がある
- 中古住宅やリフォーム物件として検討する買主にも訴求できる
- 買主が希望する建築計画に合わせて解体時期を決められる
建物に利用価値が残っている場合は、中古戸建てとして販売できる可能性もあります。
特に、建物の状態が比較的良好で、耐震性や設備に大きな問題がない場合は、リフォームを前提とする購入希望者が見つかることがあります。
契約条件を明確にする
古家付き土地として売却する場合は、建物の状態や契約条件を明確にすることが重要です。
建物を現状のまま引き渡すのか、売主が解体して引き渡すのか、建物に不具合があった場合の責任をどのように定めるのかを売買契約書に記載します。
買主との認識の違いを防ぐため、雨漏り、シロアリ、設備故障など、売主が把握している不具合は事前に伝えましょう。
低価格の空き家を売却しやすくする制度改正
地方の空き家は売却価格が低くなることがあり、不動産会社が販売活動にかける費用や手間に対して、仲介手数料が十分でないという課題がありました。
こうした空き家の流通を促進するため、低廉な空き家等に関する仲介手数料の特例が見直されています。
800万円以下の低廉な空き家等が対象になる場合がある
一定の条件を満たす売買価格800万円以下の低廉な空き家等については、不動産会社が受け取れる仲介手数料の上限に特例が設けられています。
この制度により、通常の仲介手数料では販売活動が難しかった低価格帯の空き家についても、不動産会社が調査や広告、現地案内などに取り組みやすくなっています。
ただし、特例を利用する場合は、媒介契約を結ぶ際に報酬額について売主と不動産会社が合意しておく必要があります。
古い家でも売れないとは限らない
築年数が古い、地方にある、建物が傷んでいるという理由だけで、売却できないと決めつける必要はありません。
周辺で住宅を探している方、移住を希望する方、賃貸経営を検討する投資家、リフォーム前提の購入者など、物件ごとに異なる需要が考えられます。
土地の広さや立地によっては、住宅以外の用途で評価されることもあります。
まずは査定を受け、どのような購入者を想定できるのか、建物を残すべきか解体すべきかを確認しましょう。
相続した空き家を売却する際に確認したい税制
相続した空き家を売却する場合、一定の条件を満たすことで税負担を軽減できる特例を利用できることがあります。
相続した空き家の3,000万円特別控除
被相続人が一人で暮らしていた住宅を相続し、一定の条件を満たして売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。
対象となる建物の建築時期、相続後の利用状況、耐震基準、売却期限、売却価格など、複数の要件が定められています。
建物を取り壊した後の土地を売却する場合でも、条件を満たせば対象になる可能性があります。 ただし、解体や売却の順序、期限によって適用できなくなることがあるため、事前確認が必要です。
売却前に専門家へ確認する
税制上の特例は、売却後に確認しても利用できない場合があります。
空き家の売却や解体を進める前に、税理士、不動産会社、自治体などへ相談し、必要な手続きや書類を確認しましょう。
空き家を売るか残すか判断するポイント
空き家への対応は、すべての物件で同じではありません。 建物の状態、土地の価値、将来の利用予定、管理費用などを総合的に判断する必要があります。
建物を残して売却する方が向いているケース
- 建物の状態が比較的良好である
- リフォームすれば居住できる
- 中古住宅としての需要が見込める
- 解体費用を先に負担したくない
- 住宅用地特例を維持しながら販売したい
更地にして売却する方が向いているケース
- 建物の老朽化が著しく、利用が難しい
- 倒壊や近隣への被害が懸念される
- 土地としての需要が高い
- 買主が建物の解体を負担することを嫌う地域である
- 解体費用を含めても手元に残る金額が増える見込みがある
判断する際は、建物を残した場合と解体した場合の両方について査定を受けると比較しやすくなります。
まとめ
相続した実家や空き家を放置すると、建物の老朽化、害虫や雑草、近隣トラブル、維持費の増加など、多くのリスクが生じます。
一方で、管理が大変だからといってすぐに解体すると、住宅用地特例が外れ、固定資産税の負担が大きく増える可能性があります。 さらに、解体費用を売却価格で回収できない場合もあります。
空き家は、中古住宅、古家付き土地、更地など、複数の方法で売却できます。 低価格帯の空き家を取り扱いやすくする制度や、相続空き家の売却に利用できる税制上の特例もあります。
実家を解体する前に、現在の建物と土地の価値、想定される購入者、解体費用、固定資産税、利用できる特例を確認しましょう。
今後利用する予定がない場合は、建物の価値が残っているうちに査定を受け、自分に合った売却方法を検討することが大切です。



